欧州で長距離鉄道を利用して旅行する
Using Long Distance Train in Europe
Home > 旅日記と世界の写真 > 旅の情報 > このページ
注意 : このページは1995年〜2005年頃の状況を記述したもので、現在の状況とは大きく異なります。
長距離列車の切符
レールパス
日本にJAPAN Rail Passがあるように、欧州にもレールパスがある。
日本人が買えるものの中で有名なところでは... ユーレールパス(Eurailpass)がある。
そのほか、レイルヨーロッパ(Rail
Europe)で購入できるような、ジャーマンレールパスやブリットレールパス等の各国別のパスもある。
地域別のパスや期間限定パスなどより安価なものは現地でしか購入できなかったり、使える時間帯や列車種別に制限がある場合もある。(通勤ラッシュ時間帯は利用できなかったり、インターシティは利用できないなどの制限)
ユーレールパス(1等車用 15日間)
地域限定、1日乗車券 : バイエルン・チケット
ドイツのバイエルン州限定でDBの快速列車までと各市の市内交通(トラム、バス)に乗り放題
季節限定、1日乗車券 : クリスマスチケット
オランダ全土の1日乗車券、列車種別に指定なし (2人用)
レールパスを購入してメリットがあるかどうか、個別に購入するよりお得かどうかは、各国の鉄道会社の時刻表検索サイトや、オンラインの切符予約システムで値段を調べればすぐに分かる。オンラインの切符購入サイトは、このページの『切符を買う(インターネットで)』にも記載した。
切符の種類
日本と同じく、乗車券と指定券(予約券)がある。
たいていの国では、日本のように「特急料金・急行料金という概念」は無い。列車の速さではなく、1等車乗車券・2等車乗車券というように等級別の乗車券料金になる。ただし、インターシティやそれ以上に速達性のある列車は料金が高く設定されている場合が多い。
※重要 : 各停 (Local Train とか Stop
Train)、快速(Rapid)、急行(Express)はたいていの西欧諸国では同一料金。オランダやベルギーのようにインターシティまで同一料金というような気前のよい国は少ない。東欧では急行(Express)でも加算料金を取る場合がある。
その国を代表するような高速列車は時間帯により乗車券料金が変動する場合が多い。(例:TGV、AVE、Thalys、 ICE)
高速列車以外でも乗る列車の時間帯により、乗車券料金が変動している場合もある。(例:イギリス)
※重要 : レールパス類を持っている場合は、この運賃変動から逃れられる場合もある
レールパスを持っている場合は、たいていの場合 乗車券が免除される。
※重要 : 地域パスの中には、インターシティ以上の列車が乗れないなどの条件がある場合もあり。
乗車券、指定券(予約券)
駅の窓口で切符を買うときは、レールパスを持っているのか、もっていないのかはっきりと分かるように注文する。
欲しい切符は
- 指定券(Reservation)だけなのか
- 乗車券(Ticket)と予約券(Reservation)の両方が欲しいのか
切符を受け取ったら券面を確認して、「乗車券(運賃)」が入っているのか、いないのか必ず確認する。うまく言葉が通じなかった場合、指定券(Reservation)だけしか買えなかったと言うような経験をしたこともある。(レールパスを持っている人は、逆に、指定券だけなのかを確認したほうがよいだろう...)
この切符は、指定券(予約券)「Nous vous avons reserve : 予約券である」
(オーストリアのザルツブルク ~ ビラッハ)
この切符は、乗車券 (一つ上の画像の予約券と共に使う)
この切符は、乗車券込みの指定券
(イタリアのシラクーサ ~ ナポリ の簡易寝台車)
座席の種類
● 座席車
- 1等座席車 コンパートメント (1st class seat, compartment)
- 2等座席車 コンパートメント (2nd class seat, compartment)
- 1等座席車 (1st class seat, open compartment)
- 2等座席車 (2nd class seat, open compartment)
コンパートメントとは、個室形式の座席のこと。個室といっても個人で占有できるわけではなく、それぞれの全ての席に予約を取った人が座る形式となる。
たいていの路線では、2等車から売り切れる。2等車が売り切れたら、どうしても乗りたい人は1等車を購入する。
そのため、1等車はすいている事が多い。
1等座席車、コンパートメント
ルーマニア
2等座席車、コンパートメント
スロバキア
1等座席車
スペイン AVE(高速列車)
2等座席車
イギリス Virgin Express(高速列車)
● 寝台車
2等寝台車
ブルガリア
- 1等寝台車 (1st class sleeping car)
- 2等寝台車 (2nd class sleeping car)
- クシェット、簡易寝台車 (couchette)
クシェットにも種類があり、6人部屋(T-6)や4人部屋(T-4)などを指定できる場合がある。
たいていの路線ではクシェットが人気がある。最も早く売り切れるのも、クシェット。
寝台車 = Sleeper, Sleeping Car = Voiture Lits (フランス語) = Schlafwagen (ドイツ語)
クシェット = Couchette (フランス語) = Liegewagen (ドイツ語)
● 禁煙車・喫煙車
喫煙 = Somking = Fumer (フランス語) = Rauchen (ドイツ語)
禁煙 = No Smoking = Non Fumer (フランス語) = Nicht Rauchen (ドイツ語)
長距離列車の乗り方
切符を買う(インターネットで)
予定が確定しているのなら、インターネットで切符を買ってしまったほうが断然安い。ドイツ鉄道やThalysの切符はPDFファイルでダウンロードできるので、自分で印刷してしまえばよい。
切符を購入するときに、検札時の身分証明方法を選択できる。私は、購入時のクレジットカードで身分証明するという方法をいつも取っている。
PDFでダウンロードしたThalysの切符(左側)とドイツ鉄道の切符(右側)
インターネットで切符購入できるサイトの例
切符を買う(現地の駅で)
切符売場の窓口
ソフィア駅(ブルガリア)
西欧諸国やたいていの東欧諸国では、駅に行けば切符を買える。(予約も含めて)
東欧の一部の国では、駅では当日券(出発1時間前に売り出し開始など)しか売っていない場合がある。このような国では、町の中に切符発売所なるものがあるはず。(例:ルーマニア)
座席指定の予約をするタイミングは、(1)予約したい車両が車庫を出る数時間前、(2)予約したい車両が車庫を出る前日、(3)乗車寸前まで、と国により、列車の種類、オンライン化の進展状況により違う。どのパターンか分からないなら、前日までに予約券を買ってしまうのがオススメ。
予約が車庫を出るタイミングの○○時間前となっているのは、車掌が予約カードを車内のホルダーに取り付ける必要があるからだと思われる。ICEなどの最新鋭車両では、予約ホルダーはデジタル表示に変わっているので、乗車寸前まで予約を受け付けるものと思われる。(例:ICEでは寸前予約の座席は区間を表示せず "Last Minutes" と表示されていたりする)
駅に行く
出発案内表示
ソフィア駅(ブルガリア)
駅に行き、列車がどのプラットホームから出発するか発見する必要がある。
駅構内に掲示されている 「紙に印刷された時刻表」 にも出発番線が書かれていることが多いが、デジタル式の出発案内板と食い違っている場合もあるのでご注意。
列車の遅れ状況も確認しておく。
出発案内表示 (2時間50分遅れの列車がある)
シラクーザ駅(イタリア)
列車に乗車
車両の種類 (2と大きく書かれているのは、2等車のこと)
禁煙マーク、クシェットのマークも書かれている
コペンハーゲン駅(デンマーク)
指定された番線で列車を待つ。
プラットホームに列車の編成表が貼り出されていることもあるので、乗りたい車両が停まりそうな付近で待つのが王道。
車両が到着したら、行き先を確認する。車両ごとに行き先が違うことがあるので、かならず乗り込む車両がどこ行きなのか確認する。
1等車、2等車など持っている切符で定められた車両かどうかも確認する。
予約票を持っている場合は、車両番号も確認する。旧ソビエト連邦諸国では、乗車時にチケットの確認があるので、車両を間違えることはまず起こらない(はず)。
車両に行き先も何も書いていない場合は、周囲にいる「地元っぽい人」に聞くことが肝心。
車体に取り付けられた行き先表示板(サボ)
上から下へ読む (ベネチア発、ブダペスト行き)
旧ソビエト連邦諸国での標準的行き先表示形式
(キエフ - ソフィア) 進行方向はこれだけでは分からない
予約座席へ
コンパートメント入り口の予約票掲示板
6席とも紙が入っていないので、予約なしと分かる
イタリア
座席を予約している場合は、予約座席を探す。
コンパートメント入り口に掲示されている予約票や、オープン・コンパートメントの場合は窓の上枠等に掲示されている予約票で、自分の予約区間が印刷された紙が入れられているか確認する。
座席を予約していない場合は、予約票の掲示位置に予約票が入っていないか、予約票が入っていても区間外かを確認する。
予約済みで無い場合はその席についてよい。
寝台車・クシェットに乗り込んだら
個室内の荷物置き場は、通路の上もしくは窓の上、
最下段のベッドの下である
車掌がやってきて切符を回収する。(この切符は、下車時に返却される。駅を出るまで取っておかないと、駅構内で抜き打ち検札がある場合があるそうだ)
国際列車では、パスポートを預ける場合もある。
パスポートを預けた場合は、たいていの場合、国境検査は車掌が受けてくれることになるのだが、国によっては国境の手前でパスポートを返却してくることもある。
シーツ、枕カバーは (1)それぞれのベッドの上、(2)コンパートメント内にまとめて置かれている、(3)あとで車掌が配ってくる、のいづれかである。
寝台車には個室内に洗面所がある
クシェットには、個室内にそんなものは無い
コンパートメント内の設備
コンパートメント(座席、寝台、クシェット)に乗り込んだら、室内にいろいろとボタンやノブ類がある。
● 入り口ドア側の設備
コンパートメントの場合、窓の下に暖房調節ノブがある
ゴミ箱がある場合もある
たいていの場合、入り口ドアの横か、上あたりに電灯スイッチがある。点灯-豆球が切り替えられるが、機関車が接続されていない(外部電源が供給されていない)状態ではどちらに倒しても豆球しか点かない場合が多い。
電灯スイッチの横には、放送音量のボリュームがある。でも、たいてい壊れている...
入り口ドアには、申し訳程度の鍵がついている。夜間は気休め程度に閉めておくとよい。
プロの強盗には何の役にも立たないということで、荷物用の結束バンドなどで補強している人も居る。補強しすぎて国境検査でドアをなかなか開けられなくて、軍人様の機嫌を損ねるかもしれない諸刃の剣。
窓の上にあるのは、非常ブレーキの引き紐
こちらには、何ヶ国語かで説明がある
● 窓側の設備
窓の下には、暖房用ヒーターの出力調整ノブがある。まれに壊れていて、温度調整が効かずに地獄の場合もある。
窓の下には、ゴミ箱もある。斜め向きに引き出して(倒して)開けるというのを知らない日本人が多いのか、たまに「どのように使うか」を聞かれる事がある。
検札
鉄道会社が変わるたびに、車掌が検札に来る。
ユーレールパス、インターレールパスなどの外国人対象のものや一定の条件があるパス類で乗車している場合は、条件を示す書類(パスポート、国際学生証、軍の旅行許可証など)と共に示すこと。
インターネットで購入した乗車券の場合は、購入時に使ったクレジットカードを見せないといけない場合がある。(例:DBのオンライン予約)
乗った列車の行き先が違う場合、ココでチェックが入る。鉄道パスで乗車している場合は、このチェックが入らないので、行き先を告げると間違い発見に繋がるかもしれない。
国境通過
ボスニア・ヘルツェゴビナとセルビア共和国の国境通過
セルビアの電気機関車が切り離されて、こちらにやってくる
有効なビザを持っている場合は、何も恐れることなく国境に突入して問題ないと思う。短期訪問ビザ免除国も同様。
国境で観光ビザ・通過ビザを取ろうと画策している場合は、しくじった場合に備えて荷物をとりあえずまとめておく。(国境駅で強制下車させられるため)
西欧のシェンゲン条約締結国内を移動する場合は、そもそも国境検査が無い。(例:フランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、オランダ、ベルギー、ドイツなど)
その他のEU加盟国内の国境通過は、一応国境検査がある。
それ以外の国との間には、厳格な国境検査がある場合がある。
戦時、(テロなどの)警戒態勢発動中の国の国境の場合は、さらに厳格な国境検査がある。
●厳格な国境審査がある国境の通過の例:
列車がA国の国境駅に到着する
A国の税関と麻薬探知犬がやってきて、申告するものが無いか検査する
同時に武装したA国の国境警備隊が、客室内を検査する
(天井板をはずして、天井裏に不振なものが無いかもチェックしている)
A国の入国審査官がやってきて、パスポートを回収して駅舎に持っていく
30分位して、パスポートが返却される(審査終了し、スタンプが押されている)
列車が徐行してA国内の操作場に入る。A国の機関車が切り離される
同時に、車内の電源がバッテリーに切り替わり、照明が消える(空調も止まる)
B国の機関車がやってきて、連結される。電源復活
列車が徐行して出発、国境の非武装地帯を通過し、国境線(たいていは川)を越えてB国に入る(30 分くらいかかる)
B国の国境駅に停車する
B国の入国審査官がやってきて、パスポートを回収して駅舎に持っていく
30分位して、パスポートが返却される(審査終了し、スタンプが押されている)
B国の税関と麻薬探知犬がやってきて、申告するものが無いか検査する
同時に武装したB国の国境警備隊が、客室内を検査する
(天井板をはずして、天井裏に不振なものが無いかもチェックしている)
B国の鉄道会社の車掌がやってきて、乗車券のチェックをする
以上、3~4時間くらいかかる場合がある。軌間変更がある場合は、車両ごと工場に持ち込まれるのでさらに時間がかかる。
食事
カフェテリア
スペインのEuromed (高速列車)
長距離列車には、食堂車がある場合がある。
高速列車には、軽食を出す売店などがある場合がある。1等車では食事が無料で提供される場合もある。
たいていの国では、車内販売は無い (日本の新幹線・中国の長距離列車のように、弁当の販売は行われない)。
車内販売があったとしても、パンやスナック菓子、缶ジュースやコーヒーの販売。
停車駅のプラットホーム上の売店での販売は、西欧や東欧では期待できない場合が多い。旧ソビエト連邦内では、プラットホーム上で食品や雑貨類の売店・地元民による臨時特売が開かれる場合がある。
旧ソビエト連邦規格の車両にはサモワール(給湯機)が装備されていて、熱湯が無料で飲み放題の場合が多い。西欧や東欧の列車に、そのようなものは無い。(中国のように、コンパートメント内に魔法瓶が置いてあるなんていう気の利いたサービスを、絶対に期待してはいけない。)
下車
コンパートメント車両の通路
ターミナル駅到着時には、大量の荷物を持った客で
大混雑する
寝台車・クシェットの場合は車掌が切符を返しに来る。(下車する5分~10分程度前)
寝台車・クシェットの場合、シーツや枕カバーは取り外して、ベッドの中央あたりに丸めておいて置く。
高速列車を除いて、「日本のような、騒音公害の車内放送」 は無い。プラットホームや駅舎に取り付けられた駅名プレートで下車駅か確認する。
駅名プレートの位置から離れた車両に乗っている場合(例:最後尾の車両など)、周囲の人に駅名を確認するのもいいかもしれない。
最近はGPS機能が付いたスマートフォンや、小型のノートパソコン(ネットブック)などを持っている人も多いと思うので、そういう科学技術を使って現在位置を自主的に得るのも非常に重要。(例えば、WindowsMobile (PocketPC)でGPSを使うの記事などが参考になるかも...)
下車駅かどうか、さっぱり分からなければ、降りて駅舎まで行って見る。駅舎付近には必ず駅名プレートがある。駅名プレート確認前に運悪く列車が出発してしまった場合は、運命です。その町でも観光する...
その他、日本と違う点
車両番号
プラットホームに掲示された編成表
アウグスブルク駅(ドイツ)
先頭から、1号車・2号車・3号車 ... と並んでいる場合もあれば、全くでたらめに並んでいる場合もある。
101号車・102号車・53号車・54号車・3号車・4号車・5号車 というように、全くでたらめに並んでいる場合もある。
これは、各国の車両が連結されているため、見かけ上ばらばらに見えるだけだ。
親切な駅では、プラットホームに編成表を貼りだしている。
予約票を持っていない場合でも、プラットホームのどの辺りに自分の乗りたい車両(2等車に乗りたいとか...)が停車するのか、確認できる。
時刻表
それぞれの国の鉄道会社のホームページで時刻表(乗り継ぎ)が検索できる。それだけでなく、ドイツやスイスといった国の鉄道会社のホームページでは、全欧州の時刻表検索(乗り継ぎ検索)が出来るなど、とても便利だ。私が旅行するときに利用している時刻表検索サイトは、このホームページのリンク集に掲載している。